512.テレビ山口 2024年2月10日
   里山のやっかいもの「竹」をビジネスに
     光の差す里山を目指し奮闘する25歳

2/10(土) 6:02配信  






テレビ山口
 山口県が全国4位。なんの順位かというと、竹林の面積です。上位3県は九州地方に集中していて、山口県は本州で最も大きい面積を誇ります。竹は放っておくとどんどん生い茂り、山や人里にまで広がってしまいます。そんな竹を資源として活用しようと去年、起業した女性が岩国市にいます。なぜ、竹に目をつけたのでしょうか?

「竹を資源に」会社員を辞め起業

東谷まどかさん、岩国市出身の25歳です。
去年10月、会社員を辞め「たけふぁむ」を起業しました。「たけふぁむ」では里山の所有者から依頼を受け、竹の伐採を請け負っています。

東谷まどかさん
「切るのにどこかとかかったりしないかなっていうふうに、上に笹がついているので、例えばこの木の枝とかに笹が引っかかっちゃったりしたら結構倒すのが大変になってくるんですよ」

どの竹でも切っていいわけではなく、ある程度の太さがあり比較的まっすぐ生えているものが伐採に適しているそうです。

東谷さん
「この節の所にギザギザというか毛みたいなのが見えるじゃないですか、これがある分はまだ若くて水分量が多いから、切ってしばらく経ったら枯れていくというか、状態があまりよくなくなるんです」

竹林整備は体力勝負

この山の整備を始めたのは去年10月。やっと日が差すようになりましたが、当初の状態はひどく、あたりに一面に枯れた竹が倒れ、その片付けから始めなければなりませんでした。切断した竹にロープを巻き付け、少しずつ動かしながら運びます。背丈の何倍もある竹を運ぶのには相当な体力が必要です。

奥野粋子アナウンサー
「よいしょ、よいしょ、よいしょ!いやぁこれすごいですね、結構体力勝負じゃないですか」
東谷さん
「そうなんですよ、だから2~3日しかできない」

母の言葉ヒントに新たな道へ

決して楽ではない山の仕事。力もいる大変な作業をなぜビジネスにしたのでしょうか?東谷さんは高校卒業後、就職し事務職として働いていましたが、心の病のため、休職しました。そのとき、自営業を営む母・和恵さんから聞いたことが新しい道へのヒントになりました。

東谷さん
「SDGsとか環境にいいことのビジネス、社会の課題を解決するビジネスというのが今来てるらしいと聞いて」

荒れた山「見て見ぬふりはできない」
「社会問題をビジネスで解決する」このアイデアを聞いて思い浮かべたのが、地域の荒れ果てた山でした。幼いころから、近くの山に家族でタケノコ掘りに行くなど、竹林を身近に感じていた東谷さん。竹がはびこり、荒れた山の現状を見て見ぬふりはできないと強く思いました。

東谷さん
「社会で課題になっている問題視されていて困っている、その現状を解決しつつ利益を生んでいけるっていう形じゃないですか、それがめっちゃいいじゃん、そういうのやりたいと思って」

思い立つとすぐに退職を決め、県の創業補助金制度を活用し去年10月に会社を設立しました。

母・武内和恵さん
「言いだしっぺは私なんですけど意外にもすごい乗り気になって本当に楽しんでやってくれているので。家の中でとかオフィスの中でとかそれももちろん大事なことなんですけれどやっぱり山に行って体使って。バランスをとりながらやっていける仕事っていうのが本当に楽しいな嬉しいなと思います」

母からのヒントをしっかり受け止め、経営面でもアドバイスを受けながら目を輝かせて、挑戦しています。

伐採を無償で請け負い商品化

東谷さん
「竹は1日に1メートル以上も伸びたことがあるらしいです」
奥野アナ
「1日に1メートルですか?!」

成長が早く、山を覆いつくす勢いの竹。しかし根は地下30センチほどまでと浅いため、土の流出を防ぐ力が弱く、放っておくと土砂災害の危険性が高まります。定期的に山に入り竹を伐採する必要があります。「たけふぁむ」では伐採をなんと無償で請け負っています。

東谷さん
「無償でやらないと、きれいにしようと思わないよねってなって、無償でやるけど切った竹を原材料にしていろいろ商品とかにできたらめっちゃいいじゃんっていう」

かきいかだ材料や粉砕してパウダーに
無償で伐採する代わりに、切った竹は、広島県の業者に卸しています。冬の味覚「かき」を育てるかきいかだの材料になるそうです。粉砕する新たな活用方法も考えました。枯れた竹や細かい竹を粉砕機にかけて作った「竹パウダー」を今月から市内の園芸店で販売する予定です。




テレビ山口
竹パウダーは土に混ぜたり表面にまいたりすると、肥料の分解が促進され植物が栄養分を吸収しやすくなる効果があるそうです。ただ、今のところ利益となる収入はわずか。人件費を考えるとマイナスの状態です。それでも先を見据え、山に価値を感じられる仕組みを生み出そうと奮闘しています。

東谷さん
「なんか楽しいですよね、やっぱり新しいことを始めるっていうのは赤ちゃんみたいなもんです。歩けたらわ~いって喜ぶ、走れたらわ~いって喜ぶみたいなああいう感じでいちいち喜んでいけたら楽しいと思うので私も楽しんでやっていかないと、とは思うんですけどね」

ただ、「人手不足」は否めません。森林組合で働いた経験のある男性従業員1人のほか、両親が手伝っていますが、作業が追いつかないのが現状です。

体験イベントで共感の輪広げる

東谷さん

「こうして竹林のところまでわざわざ来て体験までしてくださるという方はなかなかいらっしゃらないので、とてもありがたく心強く思っております。今日はよろしくお願いいたします」

人手不足の現状を変えようと考えたのが、「竹活体験イベント」です。幅広い人が山に目を向けるきっかけになればと不定期で開催し、この日は熊本県から男性1人が参加しました。将来、林業に携わりたいとやってきたそうです。

東谷さん
「去年の春、生えてきたのがもうこのぐらいの大きさになります」

男性は、本格的に山に入るのは初めて。まずは枯れた竹をまとめる作業です。実際に竹林に入ったことは、貴重な体験になったようです。

熊本から参加

「同じように頑張っている若い方を見て、自分も将来何かできることがないかなと常に考えてやっていきたいなと思いましたね。また明日からも、しっかり頑張ろうと元気をもらえましたね」

イベントを通して少しずつ共感の輪が広がっています。

東谷さん
「若い世代が今後この土地を生きていくので、そういった方たちにより目を向けていただけたら、もっと活動の幅も広がるかなと思います」

「竹害」を知り、「竹」を持続可能な資源として生かすことができれば、山や人里を守るサイクルが生まれる。光の差す里山づくりへの挑戦はこれからも続きます。
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