580.京都新聞 2024年4月21日
   京都西山産「たけのこ」に料理人がほれ込む理由
    「香りとうまみが違う」秘密は

2024年4月21日 6:30 

清水さん(中央)からタケノコ栽培について学ぶ
岡野さん(右)ら=京都市西京区


白さやうまみを生かしたタケノコご飯(豪龍久保提供)


花山椒とタケノコ、和牛のしゃぶしゃぶ(豪龍久保提供)


向日丘陵の竹林を巡る「竹の径」。
散策に人気だ(向日市寺戸町)
 春の味覚、タケノコがシーズン真っ盛り。やわらかく白い京都西山(乙訓地域と京都市西京区)産のタケノコは、インバウンド(訪日客)回復に伴い高品質な食材を求めるホテルや料理人から引っ張りだこだ。竹林観光に訪れたいと望む観光客もおり、富裕層向けの特別な竹林ツアーを検討するホテルも。京都観光の「穴場」としても注目を集めている。

 「りんとした雰囲気がいいなあ」。4月初旬、ホテル「ザ・サウザンド京都」(京都市下京区)の日本料理店「KIZAHASHI」の料理長岡野真介さん(46)らが、京都市西京区にある清水農園のタケノコ畑にやってきた。


 西山産のタケノコは、100年以上にわたり伝統的な「京都式軟化栽培法」で育てられている。不要な竹を間引いたり、わらや土を敷いたりと年間を通じて手入れがされているため、タケノコ畑は日差しが地面まで届き、明るいのが特徴だ。

 岡野さんの訪問は2回目。良質のタケノコを求める顧客が多いことに加え、ホテルとして地域貢献やSDGs(持続可能な開発目標)をテーマにしており、料理人やスタッフが食材の産地を訪問し、生産者とともに汗を流す。岡野さんは「昔から大切にされてきたタケノコ畑を、われわれも料理を通じて守っていきたい。産地のストーリーを料理や会話に織り交ぜて提供したい」と話す。農家の清水大介さん(41)に教えてもらいながら、専用の農具「ホリ」で土の中にある白いタケノコを収穫し、「香りとうまみが違う」と顔をほころばせた。


 日本料理の名店「豪龍久保」(東京都港区)の久保豪さん(49)も、西山産のタケノコにほれ込む一人。「タケノコ職人」を自負し、西京区や向日市に畑を持つ「たけのこ旬一」(京都市西京区)の田原一樹さん(41)から毎年仕入れている。「良質なタケノコは東京の料理人では取り合い。日本料理の良さは季節感で、増えている海外の日本マニアは春と言えばタケノコを求める。きれいな味わいは、1年間の丁寧な手入れがあるからこそ」と太鼓判を押す。人気は、タケノコと花山椒(さんしょう)、和牛のしゃぶしゃぶ。調味料をあまり使わずに仕上げられるのは、西山産のタケノコならではという。


 料理だけではなく、風景としての魅力に着目するホテルも。米ヒルトン系列の高級ホテル「ROKU KYOTO(ロク・キョウト)」(北区)には、国内外の宿泊客から「竹林に行きたい」「混雑していない竹林で、私たちだけの特別な写真を撮りたい」という声が多く寄せられる。そのため、竹林をテーマにより幅広い提案ができるようにと、コンシェルジュらが3月、向日市や長岡京市を視察した。


 高級車のCM撮影に使われ、個人旅行の外国人観光客も訪れる観光名所「竹の径(みち)」で、手入れされた竹林や、地元職人が手がける竹垣を見学し、「雨でしっとりとぬれた竹の緑、竹と竹の間から差し込む光など、一歩踏み込んだ京都を感じられる」と高く評価した。広報担当者は「向日丘陵の落ち着いた環境で写真を撮影し、タケノコ料理やタケノコ掘りを楽しめる。エリア全体で有意義な時間や体験をしてもらうよう提案できるかも。地域と一緒に魅力を発信したい」と意気込んでいる。
2024年4月21日 6:30 今口規子