842.山陰中央新報 2025年04月17日
   主要な竹「ハチク」全国各地で一斉枯れ
    120年に1度の現象、タケノコも確認できず
    自宅の裏山、道路脇でも倒竹懸念…しかし行政の撤去補助はなし

4/17(木) 6:00配信 

男性宅の裏山のハチク。幹が折れた竹が目立つ
=島根県浜田市後野町(山陰中央新報)
 全国的に生えている竹の一種、ハチクが一斉に枯れる現象が山陰両県を含め全国各地で起きている。120年に1度の現象とされている。枯れた竹の幹は風雨で折れやすく、景観悪化や道路、家屋への倒竹を心配する声が出ている。

 「幹が折れるときに大きな音が出た」。島根県浜田市後野町の男性(77)が明かす。自宅裏手の竹林は10年前から徐々に枯れ始め、今は白くしなびた幹だけの状態になっている。家屋に向かって幹が折れ曲がった竹が何本か残る。数年前に業者に依頼して伐採したが、費用がかさみ、全てはできなかった。

 町内の竹林もここ数年で相次いで枯れており、昨年はタケノコを確認できなかったという。男性は「少し前までは青々としていた。土砂崩れが起きないか心配だ」と案じた。

 石央森林組合(浜田市金城町下来原)の渡辺寿専務もこの2、3年で枯れた竹が広がっていると感じる。今冬の積雪で幹が折れており「浜田市内の道路脇では倒竹の恐れがある箇所が複数ある」と警戒する。

 島根県立三瓶自然館(大田市三瓶町)によると、竹は種類ごとに開花周期が決まっている。ハチクは120年に1度、初夏に開花し一斉に枯れる。前回の開花が1908年ごろで、2020年ごろから全国で開花しているという。開花の詳しいメカニズムは分かっていない。

 開花周期がそろう理由は諸説ある。籠や家の基礎材として竹が大量に必要だった時代、遺伝子が基本的に同じハチクが全国に株分けされて一気に広がったのが一つの理由に挙げられるという。開花後、地上の部分は徐々に枯れるが、地下茎の一部は生き残るため、絶滅はしない。

 植物学を専門とする三瓶自然館の井上雅仁副館長は竹の根は浅く、樹木ほど土砂を固定していないため、一斉枯死で直ちに土砂崩れが起きる恐れは考えにくいと指摘する。一方で「枯れれば幹が折れやすくなり、倒竹への注意が必要となる。観光地や庭の景観の悪化につながる」と話す。

 島根県森林整備課によると23年度末現在、県内でハチクが生えている面積は竹林全体の約1割に当たる1202ヘクタール。枯れた竹林の撤去に活用できる県の補助事業はないとしている。

 ハチクはモウソウチク、マダケとともに主要な竹の一つ。花を咲かさない間はタケノコを作り、地下茎で周囲に広がって増える。
最終更新:4/17(木) 6:00 山陰中央新報