877.産経新聞 2025年05月03日
   全国で深刻化する放置竹林
     竹メンマ、竹歯ブラシ…伐採した竹材利用にあの手この手

5/3(土) 10:00配信 

放置された竹林を整備する様子(東京都町田市提供)
(株式会社 産経デジタル)
手が加えられていない放置竹林が全国的に増加し、「竹害」の問題が深刻化している。繁殖力が強く、周囲の民家に影響を及ぼすほか、斜面などの竹林は自然災害の被害を増大させる恐れがあるためだ。自治体は伐採対策を進めるが、伐採後の竹をどうするかも課題の一つ。一部自治体や企業は、伐採した竹を食材に加工したり、ホテルのアメニティーとして利用したりするなど、さまざまな用途での活用に向け、知恵を絞っている。

■土砂災害を誘発

林野庁によると、日本国内の竹林面積は約17万5000ヘクタール(令和4年3月)とされ、微増傾向が続く。成長が早く繁殖力が強い竹は、伐採しないと瞬く間に広がる。他の樹木より根が浅いため、特に斜面の竹林は、豪雨による土砂災害を誘発する可能性も高めてしまう。

東京都町田市では放置竹林が隣接する民家や畑に繁殖するなど問題が顕在化している。令和4年に「里山環境活用保全計画」を策定し、市民団体と連携してタケノコの収穫や幼竹段階での伐採などを進める。

伐採した竹の活用にも頭をひねる。竹を破砕する機械を市内の有機農家などに無償で貸し出し、肥料として販売するのも一例だ。切り出したタケノコや幼竹をメンマに加工するなど食材への活用も推進。市は5年3月、宮崎県の企業と協定を締結し、「町田産メンマ」として年間約100キロを生産した。イベントなどでも販売した。

町田市農業振興課の担当者は「持続可能な竹林にするためには担い手の増加が必要。放置竹林の問題を知り、整備に関わろうという人が増えれば」と話す。

■プラスチック削減で

一方、意外な広がりを見せているのはホテルアメニティーの原料として竹を活用する動きだ。

4年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法で、ホテルなどの宿泊業は歯ブラシなどのプラスチック製アメニティーの削減が努力義務となった。バイオマス由来製品への転換が進む中で、原料の一つとして竹が使われるようになった。

ホテルアメニティーの製造・販売を行う「マイン」(福岡県)では、北九州市で伐採された竹をアメニティーの原料として使用している。破砕した竹を特殊な機械で粒状の素材「バイオマスペレット」に生成し、歯ブラシなどに生まれ変わらせる。商品は全国展開するホテルチェーンにも提供している。

商品を提供する一部ホテルでは使用済み歯ブラシなどを回収し、「水平リサイクル」にも取り組む。再破砕して再びアメニティーの原料となり、竹の循環を生み出す。同社の東京支店は「竹の循環に参画するホテル企業をさらに増やし、素材としての竹の可能性を広げたい」としている。

最終更新:5/3(土) 10:00 産経新聞