竹の学校Top へ戻る
 List Back  Next 


 

68 竹林日記   「アンガルンと日本童謡」 

 2014.07.26(土) 山本 律

 

竹林日記  「アンガルンと日本童謡」  2014・07・26(土) 雲ひとつない晴

 参加者:荒木、池田、稲岡、稲岡(喜)、梶原、川路、世良田、野本、原、林、山本。[11名]

 お客様:タイ音楽家 福田氏、京都大学 准教授 豊原博士 〔2名〕



 午後2時の気温が 34℃。申し分ない猛暑日だが、湿度が低いのと、どこからともなく風が流れてくるのとで、暑いけれども何とか過ごせる。汗でぬれたシャツを風が抜けると「ああ気持いい、極楽のこぼれ風や」と思う。
 「極楽のこぼれ風」を、ほとんどの人が知らないことに驚いたが、これを言ったのが80歳の女性で、この女性も母親が言うのを聞いて知ったというから、考えてみれば百年昔の言葉である。もはや死語といってよい。

 このところ稲岡さんが、タイの民族楽器「アンガルン」に熱中しておられる。
 長さと太さが僅かづつ異なる竹筒を3本、枠に並べた楽器だが、手で叩く楽器ではないが口では吹かないから一種の打楽器かと思う。やさしい澄んだ音色である。今日見せてもらったのは「C(do)」と「E(mi)」の2音だけだったが、これを音階順に並べてどうやって演奏するのか、きっと心が静まるような静かな曲になると思う。
 梶原さんが熱心に話を聞いている。「何も知らんし、わからへんから聞いてんのや」と言うが、あの熱心さはそれだけではない感じである。


 「アンガルン」の音色を聞いて、ふと日本の昔の童謡が頭に浮んだ。日本の昔の童謡はさびしい曲が多い。
 まず浮んだのが「叱られて」だった

    叱られて 叱られて あの子は町までお使いに
    この子は坊やをねんねしな
    夕べさびしい村はずれ こん と狐が啼きゃせぬか

 そして浮んだのが「雨降りお月さん」だった

    雨降りお月さん 雲の陰 お嫁に行くときゃだれと行く
    一人でからかさ差していく
    からかさないときゃなにで行く
    しゃらしゃら しゃんしゃん鈴つけた お馬に揺られて濡れて行く

 楽譜はエクセルでないとできないから、メロディーは省くが、「叱られて」といい「雨降りお月さん」といい何ともさびしいメロディーである。
 中でも、雨が降っている夜のお月さまは、お嫁に行くのに からかさを差して一人で行くというし、からかさもないときは 鈴をつけた馬に揺られて濡れて行くのである。

 この童謡を知っている人は、いまではほとんどいないかと思うが、私は覚えているし、声に出して歌うこともできる。
 哀しくなるぐらい寂しい童謡だが、これが過去の日本人の感覚だったのである。あるいは昔の嫁入りは今日の結婚式のように華やかな祝いごとではなく涙ながらの嫁入りも、よくあることとは言わないまでも稀なことではなかったのか、とも思う。戦争に負けてアメリカの文化が入ってきて、日本人の嫁入り(結婚)に対する感覚が変ってしまったのかもしれない。


                   山 本 律


=================================================
【アンガルンの試作】 ~Inaoka

 今日のお客様の福田氏と豊原博士とアンガルンの試作について、稲岡と梶原さんで3時間近くも対応しました。竹の学校としてのメリットがありません(伐採竹の有効活用と言えるほどの利用量ではない)が、梶原さんと稲岡で個人的(趣味)で対応予定です。

 と言う訳で、暑い中作業をして頂いている皆様の作業の写真はありません。申し訳ありません。
 また、法務局と府庁に提出用の7月5日の総会と総会後の理事会の議事録のサイン会を行いました。遠距離登校頂いた議長と理事の皆様、ありがとうございました。


 アンガルンの発音筒の気柱共鳴部分と本体の固有振動モード(イメージ)と、音程のチューニングの考え方を説明しました。また発音筒の鋸と鉈と小刀による製作方法を説明・実演をしました。
 試作したC音のオクターブ違いの3本の発音筒を音程解析器で確認頂いた結果、気柱共鳴部分150mmのものが大きく高めに外れていることが分かりましたた。素人(私)では打音の雑音に惑わせられたようです。
 音色では気柱共鳴部分300mmのものに濁り音があり、これは今後の課題となりました。
 またオリジナルのタイ製やインドネシア製のアンクルンの澄んだ音色と減衰時間の長さとは大きな差があるため、肉厚が薄くて固い竹が必要だろうということになりました。

★今後の対応についての打合せ結果は以下の通りです。
①発音筒の基本形状は竹の学校で試作、長さによる音程のチューニングは福田氏にお願いする。
②孟宗竹の可能性が無い訳ではないが、真竹で試作する。豊原博士から竹の学校へ試作用の真竹の提供を検討頂く。
 真竹の提供後、発音筒の試作に双方で取り掛かる。
③枠の試作のベース部分は竹で製作、発音筒のメンテナンスを考えた取り外し構造とすることを提案、合意を得たので、1本目は竹の学校で試作をして、製作ノウハウを提供する。
④孟宗竹での再試作は9月からの予定。

・右の写真は、福田氏から参考に借用させていただいているインドネシアのアンクルンで、 木琴のようなきれいな音で癒されます。
 発音筒は2本です。フレームの下枠が竹です。アンガルンより落ち着いた雰囲気で、今回の試作もこんな雰囲気を狙います。

【参考】
 左がE音で右がC音用とのことです。
 長いほうの気柱共鳴部分が各々120mmと154mmでほぼ管径補正込みの理論値となっています。
 C音の気柱共鳴部分が154mmのものは直径が細いものの長さは今回試作した150mm仕様の発音筒とほとんど同じ長さであり、試作品がC音から外れている原因が解れば、もっと良い音を作れるかもしれません・・・。

TOP     List Back  Next