276.京都新聞 2021年11月10日 洛西版
    放置竹林活用の竹杭、苗木保護に一役 シカやウサギの食害防御

2021年11月10日 14:00

竹穂垣の補修作業に励む京都洛西ロータリークラブの会員ら 
(京都市右京区)
 京都府乙訓地域の放置竹林整備などで伐採された竹で作った竹杭(くい)が、植樹されたスギなどの苗木を保護するのに一役買っている。野生動物から苗木を守る防御ネットの支えに竹杭を活用。「環境に配慮した製品」と認められ、森林復興の植樹などに使われるようになっている。この10年で200万本以上を出荷し、全国に広がりつつある。

 向日市上植野の製造会社「はちよし」などが発案した竹杭は長さ約30センチ、幅約4センチ。災害などで整備が必要な森林に植樹されたスギやヒノキの苗木にネットをかぶせ、地面に固定するために使う。

 苗木は柔らかく、背丈が低いためシカやウサギなどの野生動物が好んで食べる。このためネットで覆い守るが、大阪市の会社が開発した自然に優しいトウモロコシの繊維でつくったネットを使う。

 竹杭は10年ほどすると微生物により分解され、土に返る。竹は外皮が硬く丈夫で、繊維が豊富なため雨水を含むと土によくなじみ、一度打ち付けると野生動物が掘り起こしづらくなるという。苗木が2メートルほど成長すると、杭もネットも土に返る仕組みだ。

 はちよしの日比野寛代表(71)によると、長岡京市内で開かれた竹灯籠の催しで使われた竹の有効活用を考え、杭を思いついたという。

 竹の性質を研究しながら、10年ほど前から竹杭づくりを夫婦で始めた。放置竹林が問題になるなか、竹垣などを手掛けている地域の工房にも呼び掛け、はちよしのほか、3工房でも製造している。

 「竹杭ネット」は京都府内の森林整備で活用されているほか、東北大震災で被災した茨城県でもマツの植樹にも使われるようになり、最近では四国でも取引が増えているという。この10年で200万本以上を出荷し、ネットが設置された森林面積は昨年、向日市の面積(7・72平方キロメートル)に達した。

 プラスチックや鉄製の杭とは違い、環境に配慮された竹を使うことで、SDGs(持続可能な開発目標)の視点からも徐々に増えているとみられる。

 日比野代表は、「邪魔者になっている竹に、少し手を加えれば自然を守ることができる。人間と自然が共生できる方法として広めていきたい」と張り切っている。