322. 2022年5月15日 経済サイトプラン記事
   
竹繊維を人工衛星部品に JAXAと大分大研究「宇宙ごみ」削減の可能性

2022年5月15日 18:30 

セルロースナノファイバー(奥)と乾燥させて固めたシート
 大分県産の竹から抽出した繊維を人工衛星の部品に利用しようと、大分大が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究を進めている。従来の素材よりも観測機器の性能に及ぼす悪影響が小さく、厄介者の「宇宙ごみ」を削減できる可能性もある。耐久性などの試験を重ね実用化を目指す。

 共同研究は2021年11月に開始した。竹から繊維を取り出し、水の中で細かくほぐして微細化しセルロースナノファイバーと呼ばれる素材にする。それを乾燥させ、人工衛星の部品を製造する計画。パネルや観測機器を守る箱などが考えられるが、具体的には未定という。

 JAXAによると、人工衛星の部品には金属やプラスチックが使われるが、真空中ではアウトガスと呼ばれる気体が発生。観測機器のレンズや鏡に付着すると、データの精度が低下する。

 セルロースナノファイバーはアウトガスの発生が少なく、軽量なことも宇宙関連の素材に適している。研究グループは今後、電磁波の影響を受ける宇宙での耐久性や強度を調べ、実用化できるかどうかを評価する。

 宇宙では運用が終わった人工衛星の残骸などが漂い、国際的な問題となっている。開発者で大分大理工学部の衣本太郎准教授は、竹由来の素材であれば「大気圏に突入する際に燃え尽きる可能性が高く、ごみになりづらい」と指摘。放置された竹林が増える中、竹の有効活用策としての意義もあり「地域と宇宙産業の両方にとって有益な夢の素材だ」と話した。