401.RKB毎日放送 2023年3月29日
   
「お酒のつまみに合う!」大好評メンマの原料は放置竹林
              「迷惑もの」を特産品に 福岡・久留米市

2023年3月29日(水) 16:19

手入れが行き届かなくなった「放置竹林」。土砂災害を引き起こすおそれもあり、全国で問題となっています。福岡県久留米市でラーメンの具材などに使われるメンマに加工する取り組みが行われています。

◆繁殖力が強いのに根は浅くはる竹林……災害の可能性も
 福岡県久留米市にある高良山(標高312メートル)。中腹には高良大社があり、最近は「九州オルレ」のコースとして注目されるなど、地元の観光スポットとなっています。

 チェーンソーで作業しているのは、久留米市出身の渡辺琢磨さんと本多修三さん。週に1回、ボランティアと一緒に高良山で「放置竹林」の整備を行っています。

「放置竹林」は、たけのこ栽培のためなどに植えられた竹林が管理されなくなり、放置されてしまったものです。竹は繁殖力が強く根を浅くはるため、土砂災害を引き起こす可能性が高く全国各地で問題となっています。

 渡辺琢磨さん「代々引き継がれている竹林があって、今までは父が整備していたんですけど、高齢になって私が引き継ぐことになるので、この竹林をどうしようかと」
◆メンマ作りに挑戦することに
 普段は不動産業を営む渡辺さん。放置竹林の整備で悩んでいたとき、糸島市の事業者が放置された竹で「メンマ」を作っていることを耳にしました。

 渡辺琢磨さん「習いに行って、それが竹を活用できるいい方法じゃないかな、と。久留米でもやってみよういろんなノウハウを教えてもらって」

 渡辺さんと本多さんは糸島市を訪れ、「メンマ」の作り方を学びました。約3メートルに伸びた竹を切り、皮をはぎ、火を通して塩漬けにします。最後に味を付ければメンマの完成です。

 本多修三さん「生まれ育った場所ですから、恩返しができないかなという思いがありまして、彼の悩みを聞いて、一緒にやってみようと」

◆「久留米産のメンマ」順調なスタート
 渡辺琢磨さん「おいしいね、お酒のつまみに合うねと、大好評をいただいています。久留米の方々に食べてもらうのはうれしいことですね」

 2人が作った「久留米産のメンマ」は2022年、テスト販売で約900袋が完売するなど順調なスタートを切りました。けなんとか商品化することができました。
 2人が作った「久留米産のメンマ」は2022年、テスト販売で約900袋が完売するなど順調なスタートを切りました。けなんとか商品化することができました。

◆「おいしい」「ありがたい」顧客や市から高い評価
 久留米市内にあるラーメン店です。店主の蒲池さんも、2人が作るメンマに魅了された1人です。

 RKB小松勝「『麺家といろ』では、つけ麺や濃厚ラーメンに高良山のメンマが使用される予定です」

 麺家といろ(現在は休業中) 蒲池祐一郎さん「試食させてもらって純粋においしかったな、今まで食べたことがないメンマだな、と感じました」

 試食する渡辺琢磨さん「ああ、おいしいですね。ありがとうございます。こんなにおいしく調理していただいて」
 蒲池祐一郎さん「元がおいしいので、何もしてないです」

 久留米市もこの取り組みを高く評価していて、2023年は市が所有する竹林でもメンマを作る計画です。

 久留米市 農村森林整備課 植田啓介さん「高良山竹林環境研究所さんの取り組みは、放置竹林問題の解決につながるものでありますし、市としてもありがたい取り組みだと思っています」






◆課題の「人手」「資金」を乗り越えて
 一方で、課題もあります。人手と資金です。現在、竹林の整備はボランティアを中心に行っていて、高齢者も少なくありません。
 渡辺琢磨さん「笹がはねて目に当たったりとか、足場が悪いので転んでけがされたりとかすると大変なので、今日は(ボランティアの方には)上の方をしてもらっています」

また、活動資金を確保するため、1月下旬からクラウドファンディングを実施し、地元の人たちに協力を呼びかけました(目標金額50万円)。クラウドファンディングに参加したルーマニア料理店は、返礼品としてもらったメンマを使って新たなメニューを出す予定です。

ルーマニア料理店「イストリア」 セシュールスキー・ジェオールジェタさん
「メンマとザクスカ(ルーマニアの野菜煮込み)が一緒になると、面白いと感じると思う。おいしいとか珍しいとか。それで楽しみにしていたんですよ」

◆「一生続けていきたい」
 地元の協力を得てクラウドファンディングは目標額を上回ることができました。全国各地で深刻な問題となっている放置竹林。渡辺さんらは高良山の「未来」を見据え、地域とともに活動を続けたいとしています。

 
渡辺琢磨さん「私も高良山を守りたいので、継続して一生続けていきたいと思っています。今の子供たちが大きくなった時に、どうつないでいけるか考えながらやっています」