409. 2023年5月10日 経済サイトプラン記事
   
放置竹林でご当地メンマ
    加工や流通のノウハウを共有する純国産プロジェクトとは?

2023年5月10日 6:00 


「LOCAL BAMBOO」の延岡メンマを添えた
アイスクリーム(同社提供)
 
メンマに加工する竹を手にする
日高栄治さん=4月、福岡県糸島市

全国の竹林面積の推移
 竹を伐採し、ご当地メンマとして売り出す動きが盛んだ。里山の生態系に悪影響を及ぼし、土砂崩れの危険性がある「放置竹林」の解消が狙い。にょきにょきと生える“厄介者”をおいしく食べてもらおうと、加工や流通のノウハウを共有する「純国産メンマプロジェクト」の輪が全国に広がっている。
 農家らが持ち込んだ1~2メートルの若い竹を1キロ60円で買い取り、ゆでて塩漬けにする。しゃきしゃきした食感が売りの福岡・糸島産は、ご当地メンマの先進例だ。直売所やラーメン店に卸す日高栄治さん(76)はプロジェクトの会長を務め「竹の利用価値が上がれば、竹林整備も進む」と意義を強調する。
 タケノコは地面を掘って収穫するが、メンマ用は春に伸び始めた若い竹を切るため「収穫の手間はそれほどかからない」と日高さん。プロジェクトには今、23都府県の46団体が参加する。
 竹は民具などに加工されてきたが近年は需要が減り、荒れた竹林は地域の課題となっている。林野庁の最新統計では全国の竹林面積は16万ヘクタールを超えて増加傾向だ。竹が生えすぎると日光を遮り他の植物が枯れる。竹の根は浅く、土砂災害を引き起こす恐れが高まる。
 一方、流通するメンマの9割以上は中国などの輸入品だ。日本にはあまり生えない「麻竹(まちく)」が材料だが、日本のモウソウチクや真竹でも節を除くといった工夫をして、メンマになることが知られ始めた。
 宮崎県延岡市の新興企業「LOCAL BAMBOO(ローカルバンブー)」の「延岡メンマ」は、全日本空輸国際線のファーストクラス機内食に採用された。江原太郎社長(32)らが伐採したり、地元農協から買い取ったりした竹を使い、延岡産の唐辛子とみそでピリ辛の味に仕上げた。「トーストやパスタ、アイスクリームと合わせてもおいしい」(江原さん)と自信作だ。
 「おにぎりに合う」メンマを4月に発売したのは、熊本県多良木町の悠久農園。コメと一緒に毎日食べてもらおうと梅とゆずみその二つの味を用意した。
 天竜川川下りの船頭だった長野県飯田市の曽根原宗夫さん(58)は、うっそうと茂る竹とごみが渓谷の景観を乱していたことから整備を始めた。ボランティアらと竹を刈り、地元の漬物店で味付けや包装をしてもらう。塩漬けした後、さいころ状に切ってまぜ込んだドレッシングも販売する。
 曽根原さんは「急斜面に生えた竹を伐採するには人手が必要だ。地域を巻き込めば竹林は宝の山になる」と話している。
 純国産メンマプロジェクトの参加46団体は栃木、群馬、千葉、東京、神奈川、新潟、富山、長野、静岡、愛知、京都、兵庫、奈良、和歌山、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、福岡、佐賀、大分、鹿児島の23都府県など。