468.毎日新聞 2023年11月26日
   「やっかいもの」の放置竹林 独自技術で餌・肥料に転換、特許獲得も

  

11/26(日) 11:15配信
放置竹林を原料にした肥料・飼料を開発した
田中社長(毎日新聞)
 全国で問題視されている放置竹林。やっかいものの竹の無料伐採を請け負い、独自の技術で畜産飼料や農作物の肥料として見事転換させたのが大和(やまと)フロンティア(本社・宮崎県都城市)社長の田中浩一郎さん(54)だ。豚の健康状態が向上したり果物の甘みが増したりと、農家などから驚きの声とデータが寄せられているという。【加藤学】

――飼料や肥料を作るようになった経緯を

 実は今も給油所などの地下タンクを点検する会社でもあるんですが、私が設立してすぐに法改正などで給油所閉鎖が相次ぎ「次の事業」を模索しました。都城は畜産が盛んです。牛などのし尿などを吸うのこくずを製材所から買って畜産農家に卸す仕事を始め、そのうち機械を購入し端材や丸太をのこくずにする事業を続けました。ところがバイオマス発電所が各地で建設され原料が高騰。「困ったな」と思っていたところに、目をつけたのが竹でした。ただ、青竹は発熱して「のこくず」としては使えなかったんです。

 ――そこで飼料や肥料に

 県畜産試験場が竹を材料にした飼料製造に成功したと知り、直接訪ねて共同で事業化に取り組むことになりました。壁は二つ。牛は食べたものを胃から口に戻してかむ「はんすう」が不可欠ですが、粉でも大きすぎてもダメ。1ミリ程度に粉砕することに成功しました。また、かびを発生させずに発酵・製造させる技術で特許を獲得しました。

 ――“実力”をあちこちで証明しているとか

 竹の肥料としての魅力は既に雑誌で紹介されていました。宮崎大学などと実証実験を行い、今も各地のJAや自治体で続いており、成果が寄せられてます。当社の飼料はビタミンAなどが、肥料は乳酸菌発酵微生物が豊富で、糖度15度程度だったメロンが16・9度になるなど、20種類超の作物で生育状況の向上や病気の抑制が確認されています。

 ――他社がまねするのでは

 確かに売上高はここ3年で2・5倍になりましたが、金もうけだけを考えていても無理でしょう。私たちの軸足はあくまで地域貢献活動。伐採の依頼は殺到し、2年先まで予約でいっぱいです。傾斜がきつい斜面はお断りしています。従業員を危険な目に遭わせられません。今は鹿児島など南九州を中心に展開していますが、九州北部に広げたいですね。

 ◇田中浩一郎(たなか・こういちろう)さん

 都城市出身。地元のコンピューター専門学校を卒業後、20~35歳まで起業を4回重ね、2005年に今の会社を設立。当初は従業員と2人でのスタートだった。同社は環境保全と経済活動を両立させる取り組みが評価され、宮崎、鹿児島両県の14市町と包括連携協定を結ぶ。22~23年、宮崎中小企業大賞や宮崎放送が顕彰するSDGs環境大賞を受賞。

最終更新:11/26(日) 11:17
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