473.新潟放送 2023年12月09日
   “竹のまちの課題”を『新たな価値』に
     故郷に戻った44歳が挑む「道の駅を通じて地域をつなげたい」

12/9(土) 8:02配信 
道の駅たがみ 馬場大輔 駅長(44)
 新潟で暮らす移住者や、新潟で街づくりに携わる人たちにスポットを当てる「Nターンズ」。
 今回は、ふるさと新潟県田上町で“地域づくり”に汗を流す男性を取材しました。特産の竹を通して地域づくりに取り組むプロジェクトとは…

■2020年オープンの“やさしい道の駅”

「こんにちは!きょうは、どちらから いらっしゃったんですか?」

訪れる客に声をかけるのは、国道403号沿いに3年前にできた『道の駅たがみ』駅長の馬場大輔さん(44)。まちから委託を受け、運営をしています。

「道の駅って新潟に42あるし、全国だと1200あるんですけど、普通に道の駅でやってしまうと、なかなか届く場所にも届かないなというふうに考えて、僕らは来て楽しいとか、ワクワクするとかっていうようなことを、ここでイメージづくり、ブランディングできないかな…」

コンセプトは「やさしい道の駅」。“人の心が通いあう”商品がそろっています。

■“市がなかった”自分たちの町にできた、自分たちの商品を売る場所

『道の駅たがみ』の馬場大輔駅長(44)が紹介してくれたのは梅干し。ちゃんと“田上の梅干し”と名前が付けられています。

どんな特徴があるのかと聞いてみると、馬場さんは「『実が小さくて種が小さいから、これおにぎりにぴったりの梅干しなんです』っていうことを、かわいくデザインして…」と話します。

新潟県田上町には梅林が広がり、春には『うめまつり』が開かれます。“越の梅”というブランド梅もあるほど有名なのです。

このほかにも店に並べる野菜は朝採りにこだわるなど、農家と一緒に、おいしい田上ブランドをつくっています。

出店者
「お客さんが多いので張り合いがあります」

道の駅たがみ 馬場大輔駅長
「田上町っていうのは、歴史的に“市”がないまちなんです。“市が立たなかったまち”、という言い方がいい。そういう意味でいうと、初めて自分たちのまちにできた自分たちのものを売る場として、みなさんに活用いただいていると僕は感じています」

買い物客 ―何を買われたんですか?「ナスとキュウリと枝豆と…」
馬場大輔駅長「たくさんありがとうございます」

■「道の駅を通じて“この地域をつなげたい”」

以前、新潟市で働いていた馬場さん。
しかし、故郷のために力を尽くしたいと、道の駅ができたことをきっかけに、田上へ戻ってきました。

「このまちっていうのは、どうしても町内に高校がないので町外の高校へ行き、そのまま就職をしたり進学をする。そうすると自分のまちへ戻って何かチャレンジをするのが難しい、そういう環境が整いにくいというか。“子どもたちにこの地域をつないでいく”ということに挑戦したいと思って手をあげました。なので、道の駅をしたいというよりは、道の駅を通してこの地域をつなげたい」

「おいしいね!やわらかい、皮が」
田上を発信する宣伝隊長としても活躍する馬場さん。いまチカラをいれているのは?

「バンブー、竹ですね、まずは。田上は竹のまちなんだ、そこを入り口にしようと僕らは思っていて」

■田上町は“竹のまち” 何とか生かせないか…

田上町は17ヘクタールもおよぶ竹林があり、竹のまちとしても知られています。しかし高齢化に伴い、整備が行き届かない場所が増えてきているのです。そこで考えたのが「みんなで竹林整備をして、出てきた竹を活用してアートにして、そのアートを竹林に戻してアート会場にするプロジェクト」でした。

竹を使ったアートプロジェクト『たがみバンブーブー』。
竹林を人が集える場所に再生しようと、アーティストや地元の仲間と一緒に企画しました。

竹あかり総合プロデュース集団 CHIKAKEN・三城賢士さん
「通常、僕らがやるときは竹は山から切り出すし、演出は町なかや神社とか竹林ではない場所でやるので… ここは竹林がメインということで、そこが他とは全然違うし、おもしろいことろ」

道の駅たがみ 馬場大輔駅長(44)
「山口光栄くんはお肉屋さんだけど、むちゃくちゃすごい筋肉しているんですよ。重たいものをバリバリ持つし、竹は切る… そういう“自分の得意なもの”をみんな持ち寄って、やれることの総合力でやっている」

田上町商工会青年部・山口光栄さん(44)
「携われること、地域活動の担い手として参加できるのが一番大きい」

■「“竹林という宝物”の価値に気づいたとき、未来は広がる」

アート作品のメインとなる竹の灯篭は、地元の園児から大人まで述べ1000人以上が関わってつくりました。

馬場大輔さん
「竹林は僕らにとって価値だし宝物だから、それを皆でともすことによって、いろんな人にその価値を知ってもらおうと。特に、地元の子どもたちが価値に気づいたときに、未来は広がると思っている」

竹林がアートに!『バンブーブー』を訪れた地元のみなさんの反応は?

「もう、すごい!の一言」
「ここなんて、うっそうとして誰も近寄らなった。こんなに見事に変わったなんて、すごいことです」

人のこころにもあかりを灯す。田上の未来が広がっていきます。

道の駅たがみ 馬場大輔駅長
「このアートは、今まで見えていた景色に気づかなかった視点を与えてくれるものかなと思っていて、この竹のすっと伸びた空との関係だったり、竹が持つ緑の美しさだったり、奥行きだったりをアートが引き出している」

■「地域の課題を“地域の価値”へ…」

実は田上の竹、アートだけではありません。
お昼時でにぎわう、道の駅たがみ。地元食材をつかった食堂が人気を呼んでいます。馬場駅長のイチオシがメンマラーメン!実は、このメンマ、田上の竹からつくったものなのです。

道の駅たがみ 馬場大輔駅長(44)
「この地域の放置竹林の課題を地域の価値に変える。そのプロジェクトのひとつとして、メンマづくりにも参加しています」

大きく育つ前の「幼竹」を切り出し、塩漬けにして発酵させます。どんな味付けがいいか試作を重ねて10月に商品化しました。

道の駅たがみ 馬場大輔駅長
「僕は穂先が好きなんですよね、食感が柔らかいのがいい、辛いのものいい」

道の駅たがみ 長田明子副駅長
「私は歯ごたえがあるほうが好きです」

“竹のまち”たがみの新たな挑戦。地域の絆が強まっています。

道の駅たがみ 馬場大輔駅長
「このメンマづくりも地域のみんなと一緒に集まって、そういうコミュニティーの場にも育てていけるといい」


   人口1万1000人あまりの田上町
新潟放送