613.MBC南日本放送 2024年5月23日 洛西版
   
ふるさと新時代 合併選ばなかった大崎町
     過疎化が生んだ“厄介者”を地域の特産品に

5/23(木) 19:13配信  






今から20年前、鹿児島県内で始まった「平成の大合併」で、ふるさとはどう変わったのか?ニューズナウでは「ふるさと新時代」と題して、地域の今を見つめる特集をシリーズでお伝えしています。

5回目は、20年前に住民投票で合併を選ばなかった大崎町です。単独での財政再建は進んだ一方で、高齢化や過疎化で生まれた地域の「ある課題」を新たな特産品に変える取り組みがはじまっています。

大崎町永吉の宮園集落です。週に1回、住民が集まり、放置された竹林を伐採し整備しています。

放置竹林は、持ち主が引っ越したり高齢になったりして管理されなくなった林です。電線に倒れ掛かると停電の原因になるほか、竹は広い範囲に浅く根をはるため、地盤の表面が緩み、土砂災害のリスクが高くなるとされています。

(集落の住民)「きれいになると楽しい。以前と違って、生き生きしている気がする。今のこの地域は」

竹林面積がおよそ1万8000ヘクタールと日本一の鹿児島県。大崎町には387ヘクタールありますが、そのほとんどが放置されていて、町役場も頭を悩ませています。

(大崎町役場・農林振興課 西野泰成主任)「高齢者が増えているところと、町外に住んで管理が難しい人が増えてきたのが要因。竹林に関しては手がつけられていない状態」

宮園集落では、県の助成金や町の助けを借りて、地元の障害者支援施設と連携し、放置竹林の整備を続けています。これまで3000平方メートルが改善されました。

(障害者施設の入所者)「楽しい。みんなで集まってやれば能率もあがる」

(ひふみよベースファーム大崎 前田一也職業指導員)「地域住民と話ができる、おいしいおやつも頂ける。うちのメンバーも楽しみにして来ているので、十分楽しんでいる」

大崎町は、2004年に旧志布志町、有明町、松山町との合併を模索していましたが、住民投票の結果、わずか19票差で合併は見送られました。

合併を選ばなかった大崎町は、ごみ処理のコストを減らすため、分別を27品目に細分化することでリサイクル率日本一を達成したほか、「ふるさと納税」にも力を入れています。3年前からは町の貯金が借金を上回っていて、町の財政状況は改善されました。

一方で、課題もあります。人口の流出に歯止めはかからず、合併を見送った当時の人口は1万6000人でしたが、現在は1万2000人まで減少し、65歳以上の高齢者の割合も4割を超えました。

宮園集落も20年前は59世帯146人が暮らしていましたが、現在は44世帯77人まで半減。平均年齢は60歳を超えています。

地域行事もなくなりましたが、週に1度の竹林整備は、住民が顔を合わせる大切な時間です。手作りのお菓子などを持ち寄り、お茶を飲むのが習慣になりました。

(集落の住民)「竹林で働くようになって、みんなと会えるのが一番の楽しみ」

(中野ひとみさん)「2年前に整備した竹林。足の踏み入れる場所がなかった、ここも」

宮園集落の中野ひとみさん(54)です。小学校の特別指導員を今年3月に退職し、新たに取り組んでいるのが、伐採した2メートル前後の幼い竹を活用したメンマづくりです。

工場をつくるため、クラウドファンディングで100万円の資金を集めて、自宅の築90年の馬小屋を1年かけて自ら改修。工場は来月完成し、メンマも商品化の予定です。

(中野ひとみさん)「今まで竹は邪魔者だったけど、竹の魅力がいいなと思った」

工場の横には住民が集う拠点づくりも進めていて、地元の子どもたちにタケノコ掘りや竹灯籠づくりを教えています。

(中野ひとみさん)「こういう小さな集落からでも、何か夢があれば叶えられる」

竹の利活用はメンマだけではありません。集落にある大きな窯で焼かれ、竹炭にします。そして、大崎町の障害者支援施設が買い取り、サツマイモ畑に細かく砕いてまいていきます。ミネラルが豊富な竹炭で土壌が改良され、収穫量の増加などが期待できるといいます。

(社会福祉法人 愛生会・福重順一常務理事)「収穫後の土壌を耕耘して立ってみると、足の感覚で土壌改良されてるんだなと感じる。いい取り組みじゃないかなと思う」

サツマイモは地元の会社で年間500キロほどが加工され、「竹炭を使った干し芋」として物産展などで売られています。

(食品加工会社コーセン 吉留竜太社長)「1次産業の町。それに付随してできること着目できれば。小さい企業は小さい企業なりにできることをやって、町に少しでも貢献していきたい」

“地域の厄介者”だった放置竹林ですが、今では地域の産業や、住民同士の交流のきっかけになっています。

(集落の住民)「きょうは竹を刈って、明日はグランドゴルフ。(Q.どっちが楽しい?)両方とも楽しい」

(中野ひとみさん)「就労支援だから高齢だからと、そんなの関係なく若い人たちにも来てほしい。あそこでは竹林整備してきれいになったよと、みんなにわかってもらえれば、そこからがみんなにつながっていく第1歩だと思う」

日本全国で課題となっている放置竹林。過疎化が生んだ地域の課題を新たな交流の拠点に変える取り組みがはじまっています。

南日本放送
最終更新:5/23(木) 19:13 MBC南日本放送