850.東洋経済オンライン 2025年04月19日
今が旬!たけのこはトップクラスの「デトックス」食材
老廃物の排出効果を引き出す”薬剤師おすすめ”の食べ方と余ったときの保存法
4/19(土) 6:02配信
春といったらたけのこです!(写真:shige hattori/PIXTA)
筆者が作った発酵たけのこ(写真:筆者撮影)
春は体内の老廃物を出すのに最適な季節です。冬にため込んだ老廃物を排出して気の巡りをよくすることによって、健康で活動的になります。
さて、この時期の旬といえば、たけのこですよね。たけのこの生育には裏年と表年があって、今年は裏年で不作のようですが、最近はスーパーでもよく見かけるようになり、お安く手に入るようになりました。
今回はこの旬の食材、たけのこを紹介いたします。
■デトックス効果がうれしい!
たけのこといえば老廃物を排出する――いわゆる“デトックス”効果が期待できる代表的な食材の1つでしょう。
漢方では、昔から体内にある不要な毒素「邪」が病の原因であるとされていて、さまざまなデトックス法が用いられてきました。その方法とは排便、排尿、発汗などで、以前は嘔吐という方法もとられていたようです(現在はほとんど行われませんが)。
たけのこに期待されるデトックスは主に「排便」によるもので、その最大の理由は食物繊維の豊富さにあります。
食物繊維は便のカサを増して、お通じをよくしますし、コレステロールの吸収を抑え、血糖値の急上昇を防ぐのにも有用です。腸内環境も整うのでニキビなどもできにくくなり、肌の状態をよくすることにもなります。
健康のためにも、美容のためにも、食物繊維を摂ったほうがよく、そういう意味でも、たけのこはトップクラスの食材といえるのです。
実は漢方的に見ても、たけのこは優秀なデトックス食材で、体内にこもった熱を冷ます「寒」の性質を持ち、「痰(たん)を取り除いて、穴(けつ)を利する」働きがあります。
漢方でいう痰とは、広い意味で体内に停滞した老廃物をさします。老廃物はさまざまな疾患の原因となると考えられています。一方、穴を利するというのは、気の巡りをよくするという意味で、イライラを解消します。ほかにも、体内の余計な水分を排泄するため、むくみも解消してくれます。
■たけのこを控えたほうがいいケースも
このように、多くのデトックス効果が期待できるたけのこですが、注意すべき点もいくつかあります。
まず、たけのこの冷やす性質は熱がこもっている人には有用ですが、体が冷えていたり、虚弱体質だったりする人は冷えが助長され、下痢などをしてしまうおそれもあります。
以下に当てはまる人は、みそ汁やたけのこご飯など、温かい料理にして、少量だけ食べるなどの工夫が必要でしょう。
<注意が必要な方>
・胃腸の弱い人
・高齢者
・冷え症の人
それから、たけのこの「寒」の作用とは関係ありませんが、含まれる渋い成分が胎児の成長に悪影響を与える可能性があるため、妊婦さんも控えめにしたほうがいいかもしれません。
また、たけのこに含まれる成分のなかには、咳を誘発したり喘息を悪化させたりする作用を持つものもあります。アトピー性皮膚炎や中耳炎の人では症状を悪化させるおそれがあるので、少量でも注意が必要です。筆者の薬局にも、毎年この時期には、たけのこの食べすぎでアトピー性皮膚炎が悪化して相談に見える方がいらっしゃいます。
さらには、たけのこのえぐみの元はシュウ酸で、尿路結石の原因になるので、結石ができやすい人も気を付けましょう。
たけのこには、うま味成分である多くのアミノ酸が含まれていますが、食物繊維が豊富であることから消化がよくありません。おいしく食べ、かつ胃腸に負担をかけないためには、“よく煮て食べる”のがおすすめです。
筆者がおすすめしたい食べ方の1つめは、焼きたけのこです。
皮ごと真っ黒になるまでオーブンまたは焼き網で焼いて、皮を剥いてしょうゆやマヨネーズをかけて食べます。一般的にたけのこはアク抜きをしますが、それよって溶け出してしまううま味成分や健康成分も、この方法ならあますことなく摂ることができます。
もう1つは、汁ものです。成分が水に溶け出すことを逆手に取った食べ方です。みそ汁やスープカレーなどに入れて、汁ごと食べましょう。
■たくさんいただいたら保存しよう
たけのこは旬の期間は短いですが、身近な食材でもあるので、近所の方や友人からお裾分けしてもらうことも少なくありません。筆者もこの時期になると、知人からわけていただいたり、許可を得て竹林でたけのこを採集したりするので、大量のたけのこが手に入ることがあります。
たくさんあるからといって、毎日のように食べ続けるのは体によくありません。その場合、食べ切るのではなく、保存しておくのがおすすめです。筆者もいくつかの方法で保存していますが、数週間〜1年ぐらい保存できる方法をいくつか紹介したいと思います。
最も失敗の少ないのは、たけのこの酢漬けです。
アク抜きをしたたけのこを、縦に2つ割りか4つ割りにしてから輪切りにします。清潔な保存瓶(熱湯消毒、あるいはアルコール消毒をしておく)に入れて、瓶口まで酢(米酢など)を注いだらフタをしっかり閉めます。
この方法なら1年ぐらいは保存できます。酸味が強いですが、たっぷりの水にしばらく浸けておけば酸味は和らぎます。
酸味が苦手という人は、水煮の瓶詰めという方法もあります。
アク抜きして切ったたけのこを清潔な保存瓶(同)に入れ、熱湯を瓶口まで注いだら、適量の食用のクエン酸(水1リットルに対し小さじ1杯)を入れて、軽くフタをします。
水を入れた鍋にたけのこ入りの瓶を入れて、30分ほど煮沸します。瓶を取り出したらフタをしっかり閉めて、逆さにして自然冷却をします(やけどに注意しましょう)。
クエン酸には殺菌効果があるので、これを冷蔵置で保管しておくことで、1年くらいはもちます。傷むのを防ぐため、小さな瓶に小分けして作るのがおすすめです。
なお、アクの抜き方は、米のとぎ汁を使ったり、米ぬかを使ったり、重曹を使ったりする方法があります。こちらでは詳しく触れませんので、料理レシピなどを見て試してみてください。
■発酵させて保存することもできる
タイやインドでは、たけのこを発酵させて保存する方法があります。
以前、発酵たけのこのスープをいただいたことがありますが、深い味わいで大変おいしかったため、自分で作ってみるようになりました。
発酵たけのこの作り方は、まず煮沸消毒、またはアルコール消毒をした保存瓶に、縦に2〜3センチ幅ぐらいに切ったたけのこを隙間がないようにぎゅうぎゅうに詰めます。瓶口まで水を注いだら、空気が入らないようにラップで覆い、その上からフタをしめます。
天気や温度にもよりますが、3〜4日で発酵することが多いようです。発酵は好みのところで止めるのがよく、冷蔵庫に入れると発酵が止まります
写真は筆者が昨年作った発酵たけのこで、2週間以上が経ったモノがおいしかったです。ただ、慣れていない方は発酵と腐敗の違いがわからないと思うので、長期間保存しないで食べきりましょう(※外部配信先では写真を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
ヨーグルトのような爽やかな酸っぱい匂いは発酵したときの特徴的な匂いですが、腐敗臭がしたら迷わず捨ててください。
この発酵たけのこを使ったスープをご紹介します。
■発酵たけのこのスープ(2人前)
【材料】
発酵たけのこ 1本の4分の1ほど
鶏モモ肉 100グラム
マッシュルーム 4〜5個
レモングラス 1本(なければ最後にレモンを絞って代用)
ココナッツミルク 100mL
水 2カップ
塩またはナンプラー 少々
パクチーの葉 少々
【作り方】
鶏モモ肉は食べやすい大きさに切る。ココナッツミルク以外の材料を鍋に入れ、中火で15分ほど煮込む。ココナッツミルクを加えたら、塩またはナンプラーで味を整える。最後にパクチーを数枚浮かべる。
たけのこは、中国で編さんされた『本草綱目(ほんぞうこうもく)』という古書にも記述がある食材です。
「旬内は竹の子、旬外は竹」というもので、たけのこは10日間ぐらいしか食べる時期がなく、10日を超えて旬を過ぎると竹となる、つまりたけのこは成長が早く、おいしく食べられる期間が短いことを記したものです。
「旬」という漢字にはもともと10日間という意味があります。月を区切る際に上旬、中旬、下旬という言い方をするのも、そのためです。
■竹は漢方薬の生薬になっている
たけのこが成長すると竹になりますが、この竹は漢方処方に配合される生薬にもなっていて、竹の葉は「竹葉(ちくよう)」と、竹の幹の皮は「竹筎(ちくじょ)」といいます。
これらが含まれている漢方薬には、「竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)」や「清肺湯(せいはいとう)」、「竹茹温胆湯(ちくじょうんたんとう)」などがあります。
竹葉石膏湯は熱を下げて熱により不足した水分を潤う働きが、清肺湯や竹茹温胆湯は、熱性の咳や痰を抑える働きがあるとされています。
また、漢方ではありませんが、竹を火であぶってにじみ出る「竹瀝(ちくれき)」は、古くから咳止めなどの民間療法として使われてきました。
平地 治美 :薬剤師、鍼灸師。 和光鍼灸治療院・漢方薬局代表
最終更新:4/19(土) 6:02 東洋経済オンライン