171.神戸新聞Next 2019年2月1日
    次は2139年か…?
    120年に一度といわれるタケ開花 謎多く不吉の象徴とも

2019/2/1(金) 11:00配信


  開花し、おしべを垂らすクロチク=明石市荷山町、明石高校

 「明高の庭で、タケに花が咲いているらしい」。そんなうわさを耳にした。タケの花? 聞いたことがない。調べると「開花は120年に一度」という情報も。これは見に行かねば。兵庫県明石市荷山町の県立明石高校を訪ねた。

 同校で理科を担当する中江涼先生(31)が案内してくれた。「一斉に開花してますよ。あんまりきれいじゃないですが…」。

 同校資料館の横にある林。小さな池を囲むように、黒っぽいタケが生えている。

 「クロチク」というタケの一種で、筆や工芸品などに使われる「いいタケ」なのだとか。緑色の葉の間に、3、4センチ大のトゲトゲした茶色い塊が生えている。想像とはかけ離れた姿だが、どうやらこれがタケの花らしい。

 「イネ科の植物なので、イネの花に似ています。この黄色っぽい部分がおしべ」と中江先生。よく見ると、ちいさな房が垂れ下がっていた。「最初は黄色いけど、時間がたつと乾燥して白っぽくなります」

 大学で植物学を学んだという中江先生は「非常に珍しい現象なので、まさか実際に見られるとは」とうれしそう。一方、生徒たちはあまりの地味さに「これが花…」と薄いリアクション。

 120年に一度の現象というのは本当か。

 県立人と自然の博物館(三田市)、植物生態学の主任研究員、橋本佳延さんに聞くと「数十年に一度と言われているが、詳しくは分かっていない」らしい。

 「周期が人の寿命より長いこともあり、同じタケでの観測が難しいのです」

 橋本さんによると、タケやササの開花はなぜか全国で一斉に起こることが多いという。記録によると、1970年代には、日本に生える代表的なタケ「マダケ」が一斉に開花。だが、タケは開花すると枯死するそうで、全国でタケが不足する事態が起きたという。

 2016、17年には六甲山でササの一種「スズタケ」が開花し、同時期にまったく違う場所からもスズタケの開花情報が寄せられたというから不思議だ。

 「タケは外的ストレスによって突然変異的に開花することもあるが、ひょっとしたら今後、クロチクの開花情報が集まってくるかも」と橋本さん。

 一斉に開花し枯れることから、不吉の象徴といわれることもあるらしいが、気にしない、気にしない。

 一生に一度かもしれない開花現象を見られて、なんだかラッキーな気分になった。(勝浦美香)