497.神戸新聞Next 2024年1月15日
   「1・17」竹灯籠が半減、今年は紙灯籠が多く
    震災追悼行事の象徴、持続可能な最適解は? 神戸・東遊園地

1/15(月) 9:30配信 

昨年の「1・17のつどい」で竹灯籠に火をともす人たち
=東遊園地(撮影・秋山亮太)(Copyright(C) 2024
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 毎年1月17日に神戸・三宮である阪神・淡路大震災の追悼行事で、「1・17」の文字をかたどる竹灯籠が、今年は3千本程度と前年から半減する見込みとなった。多い年で千本以上を提供してきた兵庫県但馬地域の団体が高齢化に伴い、提供が困難になったためという。実行委員会は「竹灯籠はつどいの象徴」と見るが、既に紙灯籠も導入しており、持続可能な運営方法を模索している。(井川朋宏)

 「1・17のつどい」は1998年1月17日、神戸市中央区の旧吾妻小学校(現・コミスタこうべ)であった追悼行事が始まりで、犠牲者数と同じ6434本の竹筒にろうそくを浮かべ、「1・17」の形に並べていた。翌99年から会場を東遊園地に移し、定着した。

 同県新温泉町社会福祉協議会によると、開始初期から、町内各地で60代以上が入る「すこやかクラブ」は竹灯籠を提供。震災25年となった2020年に1500本超に上ったが、23年は約600本まで減少していた。

 作業は毎年計数十人が関わってきたといい、このうちほぼ単独で約10年作業した赤坂裕司さん(71)は「労力がかかり、しんどいね。ただ、責任があった」と明かす。気持ちを支えていたのは、同じ兵庫県民としての追悼の思いだった。

 例年12月、竹林に入ってのこぎりで切って倒し、長さ60センチ程度ずつを30~40本、斜めに切断。軽トラックの荷台に積んで自宅の軒下に運び、1週間ほど乾燥させてから文字を書き込んだ。ただ、一部地域で中心的に作業していた男性が取りやめ、同クラブ連合会としても担い手不足と高齢化に伴い、撤退する判断に至ったという。

 さらに、多い年で数百本を提供してきた豊岡市の団体も撤退を決めた。市社会福祉協議会によると、シルバー人材センターや地域交流の場で有志が作業したものの、高齢化が進んで継続が困難になったという。

 つどいではこれまでも、竹灯籠不足は幾度も課題に上がってきた。震災20年の2015年を経て、竹灯籠を準備してきたボランティア団体「神戸・市民交流会」が高齢化などで解散。NPO法人阪神淡路大震災1・17希望の灯(あか)り(HANDS)が作業を引き継ぎ、市民の関心を高める改革案として、灯籠で形作る文字の公募が始まった。

 また、20年からの新型コロナウイルスの影響で本数が例年のように集まらず、21年のつどいにはラミネート加工した紙を筒状に丸めた「紙灯籠」を導入した。14年の広島土砂災害の被災地を参考にしたという。

 今年は、紙灯籠は前年と同じ約4千本を用意する一方、竹灯籠は県内外の計15団体から提供される3千本程度を見込む。実行委員長の藤本真一さん(39)=HANDS代表理事=は「減る流れは当然で、致し方のないこと。支援いただけるならお願いしたいが、無理して集めたいと思ってはいない」と言う。一方で「竹は伝統の一つで象徴的なもの。少なくなっても続けていける方向性を模索したい」と話している。
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