521.宮崎放送 2024年2月28日
   地域のやっかいものの「竹」を活用
     ミュージシャンが子どもたちと臨んだ楽器づくり…

2/28(水) 12:11配信  

地域のやっかいものの「竹」を活用


ミュージシャンが子どもたちと臨んだ楽器づくりと演奏会











 音楽で地域を盛り上げようというあるミュージシャンの取り組みです。
その盛り上げ方というのが、地域のやっかいものの「竹」を使った音楽活動です。子どもたちと臨んだ楽器づくりと演奏会に密着しました。

■インドネシア・バリ島に伝わる打楽器「リンディック」

都農町の都農東小学校。
この日、楽器づくりが行われていました。

(成澤けやきさん)
「おはようございます。元気いいですね。はい。」

楽器づくりの指導を行うのは成澤けやきさん。
4年前、日向市東郷町に移住した、東京都出身のミュージシャンです。

(成澤けやきさん)
「きょうはこの土台に竹の鍵盤を組み合わせていく作業をします」

子どもたちが作っているのは、「リンディック」という、インドネシアのバリ島に伝わる打楽器です。

(子ども)
「(Q.楽器づくりやってみてどう?)けっこう楽しい」
(保護者)
「初めてのことなので貴重な体験だなとは思う」

(成澤けやきさん)
「自分で楽器を組み立てることで、その楽器に対する愛着も沸くと思う。そうすると、ただ与えられた楽器よりは触る機会も増えると思うし、音楽が好きになってくれるといい」

■竹害といわれる現象を音楽を使って解決するとしたら

成澤さんの自宅には、多くの楽器があります。

成澤さんは、「ディジュリドゥ」という楽器のミュージシャンで、世界各国でフェスに参加し活動してきました。

その後、帰国し、九州をツアーで周る中で、偶然立ち寄った東郷町の良さに触れ移住。

そんな成澤さんが今取り組んでいるのが、子どもたちを対象にした「バンブー・ミュージック・ミヤザキ」という活動です。

(成澤けやきさん)
「地域の課題はいろんなジャンルでたくさんあると思う。竹害といわれる現象を、何か音楽を使って解決するとしたら、どういうことだろうということをずっと考えていた」

成澤さんが注目したのは、放置竹林など地域のやっかいものとして扱われていた「竹」。
その「竹」を活用して子どもたちと楽器を作り、演奏会を企画したのです。

竹の切り出しなどは、地域の人たちが協力して行ってきました。

(成澤けやきさん)
「音楽というアートの分野で竹がありがたいなと思ってくれるようなきっかけにもつながるといいなと」

■上を向いて歩こう

この日は、楽器を使って演奏する曲が『上を向いて歩こう』に決まりました。

(成澤けやきさん)
「『上を向いて歩こう』を知らない人?(ほぼ全員挙手)そうか、そうなんだね」

子どもたちは、あまり知らない様子。
まず、みんなで歌って曲を覚えることにしました。

成澤さんがギターを弾き、子どもたちが歌います。

(成澤けやきさん)
「(Q.この曲を選んだ理由は?)やはり日本を代表する曲でもあるし、おじいちゃん、おばあちゃんたちが地域に多いので、聞いてもらって懐かしんでもらったり、喜んでもらうためにもこの曲を選んだ」

■出来ないことが出来るようになっていく そういう過程が楽しい

演奏会まで、あと1週間。
全員の楽器が完成し、本番に向けての練習です。

(成澤けやきさん)「『歩こう』までを揃えてやります」

ところが、子どもたちの演奏はバラバラ…

(成澤けやきさん)
「ストップ、ストップ。揃えましょう。揃えましょう」

木琴などの一般的な楽器とは音階が異なるリンディック。
子どもたちも苦戦しているようです。

子どもたちは、子どもたち同士で教えあったりしながら、練習に取り組んでいきます。

(成澤けやきさん)
「こうやって出来ないことが出来るようになっていくとか、そういう過程が楽しいと思える時間をどんどん味わってもらいたいと思うので、それが本番まで続いてくれたらいい」

演奏会本番までの限られた時間、子どもたちは、空き時間を使って練習を重ねてきました。

自分の家でも繰り返し練習をしました。

そして、いよいよ迎えた演奏会当日。果たして、無事に演奏することはできるのでしょうか?

■演奏会当日 保護者や地域の人、インドネシアの留学生も

(成澤けやきさん)
「(Q.もうすぐ本番ですが?)嵐の前の静けさといった感じですね。本番に向けていい緊張感が漂っている気がする」

この日は、授業参観日。
体育館には、子どもたちの保護者や地域の人たち、それに、宮崎大学に通うインドネシアなどの留学生も訪れました。

(子ども)
「(Q.今から本番ですがどうですか?)緊張しています」
「楽しくてみんなが笑顔になれる演奏会になるといい」

(都農東小学校 曽我部美佳校長)
「(子どもたちが)テレビが入ってるから緊張してると言っていた。でも、昨日よりずっといい。昨日もリハーサルしたがよく声も出ているし頑張れると思う」

■演奏会がスタート

そして、いよいよ演奏会がスタート。

練習を重ねてきた『上を向いて歩こう』。
子どもたちの歌声、そして、手作りの「リンディック」の音色が会場にひろがります。

真剣に演奏する子どもたち。
演奏しながら子どもたちの心に浮かんできた思いは・・・

(子ども)
「成澤さんは私たちにいろいろな楽器を見せてくれたり触らせたりしてくれました」
「楽器を作るための竹は地域の方、PTAの役員さん学校の職員の方、お母さんやおじいちゃんが用意してくれました。僕たちのためにありがとうございました」
「地域の方、保護者、宮崎大学の大学生や東消防職員の方などたくさんの方が集まってくださり、4年生と楽器のくみ上げを行いました。皆さんがペアになってくみ上げてくれたおかげで作業を進めることができました」

完奏。会場に拍手が広がっていきます。

■失敗してもいいから、何か取り組むこと 自分の可能性が広がる

(来場した大学生)
「すごく頑張ったんだなというのが伝わる演奏でした」
(来場したインドネシア留学生)
「とてもすてきなインドネシアの音楽を聞かせてくれてありがとう」

(保護者)
「非常に幅広い世代の方とのつながりの中で演奏会ができて、すばらしい演奏も聞けてとてもよかったと思う」

(子ども)
「やっぱり今まで練習してきたからできたと思った」
「楽器を作るのも大変で、習うのも大変だったけど楽しかった」
「音楽自体が前からあまり好きじゃなかったけど好きになった」

(成澤けやきさん)
「子どもたちが本当に一生懸命頑張って、短い期間だったが最後は息ぴったりそろって、来て下さった方も満足していたし、いい演奏会だったと思う」

成澤さんは、この取り組みを通じて子どもたちに伝えたかったことがあるといいます。

(成澤けやきさん)
「失敗してもいいから、何か取り組むことによって、自分の可能性が広がるということをいつか感じてくれたらいい」

子どもたちが大きく成長し、地域との絆も深まった時間となりました。

【参考】
子どもたちが今回作った「リンディック」、地元の老人ホームでも演奏を披露する予定があるということです。
宮崎放送 ※MRTテレビ「Check!」2月27日(火)放送分を再構成