883.大手小町(読売新聞) 2025年05月09日
   
土地荒らす竹林をものづくりの資源に生かす動き

5/9(金) 12:10配信 

のこぎりで竹を伐採する「アトリエデフ」のプロジェクトメンバー。竹の内部は空洞だがかなりの重量があった(山梨県北杜市で)

マイン社の歯ブラシとヘアブラシ。リサイクルの掲示も(東京都中央区の「京王プレッソイン日本橋茅場町」で)
 タケノコが収穫できるが、人間の手が入らなければ野放図に地下茎が広がって土地を荒らす竹林。国連が達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)の浸透で、手間をかけて竹林に手を入れ、歯ブラシなど生活用品に生まれ変わらせる動きが進んできた。伝統的な工芸品とは一味違った竹のものづくりに注目が集まっている。

山梨県北杜市の里山に広がる竹林に2月の朝、のこぎりを手にした約10人が集まった。10メートル以上の高さがありそうな竹がうっそうと生い茂る中、のこぎりで伐採していく。竹林は1本1本の間が狭いため重機が入れず、手作業で行うしかない。切り倒した竹を運び出すのも人の手だ。作業は夕方近くまで続く。

これは長野県上田市の工務店「アトリエデフ」が取り組む保全活動。山梨、長野両県を中心に、所有者から依頼された放置竹林を有志で伐採。チップ状に砕いて土壌改良材にしたり、粉砕しペレット状にして猫のトイレ砂へ加工したりと、竹100%の生活用品に加工・販売する。同社の植松和恵さんは「竹林は里山の恵み。整備と活用への理解が広がってきた」と話す。

森林資源に詳しい兵庫県立淡路景観園芸学校学長の柴田昌三さんによると、竹は地下50センチ以上の深さまで地下茎を張り巡らせ、成長を続ける。「人が管理することで資源となって人の役に立つ。管理が重要だ」と柴田さん。戦後、プラスチックの普及によって竹の生活用品としての用途は激減。高齢化で里山の整備に携わる人も減った。

放置竹林そのものに関する統計はないが、林野庁が5年に1度実施する森林面積の調査でみると、竹林は1986年には全国で14・7万ヘクタールだったが、2022年は17・5万ヘクタールに微増。近年は竹の植林は行われていないといい、それなのに増えているのは竹が成長して広がっているからだ。

竹林の分布は西日本の温暖な地域が多い。北九州市は広葉樹に植え替えるなどの「竹転」事業を展開。官民一体で放置の拡大阻止や竹材の利活用を目指す「竹林循環都市」を掲げる。
5/9(金) 12:10配信 大手小町(読売新聞)